2023年12月08日

脱 冬ごもり!外出を楽しんで心身の健康維持を

冬の寒い時期は、どうしても外出するのがおっくうになるものですが「寒いから仕方がない」と暖かい部屋にこもりきりでいると運動不足になったり、気持ちが落ち込んだりしがちです。天気のいい日中は積極的に外に出て気分転換を図り、健康的な毎日を過ごしましょう。


教えていただいたのは ​ 監修:立川秀樹(たつかわひでき) パークサイド日比谷クリニック院長 ​ 医学博士、日本精神神経学会専門医。筑波大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。都内、埼玉、茨城、北海道にて精神科医・産業医として勤務。中野区精神障害者社会復帰センター、ストレスケア日比谷クリニック勤務を経て、パークサイド日比谷クリニック院長に就任。
目次 ● 気分がすぐれないのは家にばかりいるせい? ● こんな症状には要注意!もしかして冬季うつ病? ● 午前中に外出して太陽の光を浴びよう ● 防寒対策を万全にして外出を楽しもう! ● 外出が楽しみになるひとり散歩のススメ

気分がすぐれないのは家にばかりいるせい?

なんとなく気分が滅入る、やる気が出ないといった状態は誰にでもあることです。その状態が一時的なもので、食事がおいしく食べられたり、家族や友人と楽しく会話ができたり、テレビのお笑い番組を見て笑ったりできるなら心配はいりません。
しかし、ずっと家にこもったまま、新聞やテレビの暗いニュースを見聞きしたり、ひとりでなにか考え込んだりしていると、気持ちがマイナスな方向に引っ張られ、憂うつな気分になったり、不安な気持ちになったりしがちです。さらに、人と会話をする機会も減り、毎日ぼんやりと過ごしていると気持ちの張り合いも失われ、心身の不調が出やすくなります。

家にこもってばかりいると運動不足の心配も
家の中にずっとこもっていると身体活動が減り、運動不足になりがちです。消費エネルギーが減れば太りやすくなり、生活習慣病のリスクも高まるので、外に出て体を動かすようにしましょう。

こんな症状には要注意!もしかして冬季うつ病?

秋〜冬に現れる気分の落ち込みで注意が必要なのが、「冬季うつ病」(季節性感情障害)です。太陽光を浴びることで予防できるので、積極的に外出したり、日光浴したりすることをおすすめします。効果的な治療法もあるので、次の症状に該当する場合、早めに専門医に相談するようにしましょう。

主な症状
過食 食べ過ぎはよくないと思うのに、食欲が抑えられない。特に白米やパンなどの炭水化物、甘いものへの欲求が強い。
過眠 睡眠時間が長くなり、日中や夕方にも眠気が起こる。
抑うつ 常に気持ちが落ち込んでいて何もする気になれない。倦怠感が取れず、物事に集中できない。
その他 10〜11月頃からこうした症状が出ている。毎年、同じ時期に同じような症状に悩まされている。

午前中に外出して太陽の光を浴びよう

太陽の光を浴びることは、不安定な心や憂うつな気分を和らげてくれると同時に、冬季うつの予防や、不眠症状の改善にも効果が期待できます。そこにはセロトニンとメラトニンというホルモンが大きく関わっています。

心を落ち着かせてくれる「セロトニン」

セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで感情をコントロールしたり心を落ち着かせたりする働きがあります。朝、脳の覚醒と同時に分泌が始まり、網膜から入る光刺激によって合成が促進されます。
セロトニンが不足するとさまざまな心の不調を引き起こしやすくなります。

よい睡眠をもたらす「メラトニン」

地球の一日は24時間ですが、人間の体内時計は25時間周期で、放っておくと12日間で昼夜が逆転してしまいます。
睡眠を誘発する働きがあるメラトニンは、目の網膜から入る光刺激によってその分泌が抑えられ、その14~15時間後に分泌が増加します。適切な時間(就寝する時刻)にメラトニンが分泌されるようにしておくためには、午前中に太陽の光を浴びて体内時計をリセットする必要があります。
また、メラトニンはセロトニンを原料にしているので、太陽の光を浴びてセロトニンの量を増やすことで、夜にしっかりとメラトニンが分泌されるようになります。冬季に起きるのが辛いと感じるのは、夏季に比べて太陽の光が弱く、日照時間も短いため、セロトニンの分泌量が減少してしまうからです。セロトニンが減ると、朝、すっきりと起きられなくなることもあるので、積極的に外出して、太陽の光を浴びましょう。

防寒対策を万全にして外出を楽しもう!

保温効果の高い重ね着の仕方で、大切なのは空気の層を作り、そこに体から放出される熱をとどめておくこと。衣類の素材や着る順番によって暖かさが変わります。

使い捨てカイロを貼るならここ!
首 首を前に曲げた時に、首の後ろに突き出る骨のすぐ下にある「大椎(だいつい)」という全身を温めるツボのあたりに貼るのがおすすめ。
お腹 おへそより指2本分ほど下にある「気海(きかい)」というツボのあたりに貼れば、全身を温めることができます。
背中 肩甲骨の間に貼ると、肩から背中にかけての筋肉「僧帽筋(そうぼうきん)」を温め、全身の血流を促進。背骨に沿って2枚並べて貼ればさらにぽかぽか!
腰 おへその真裏にある「命門(めいもん)」というツボと、そこから指2本分外側にある「腎兪(じんゆ)」というツボの辺りをカバーするように貼ると、腰全体が温まります。
足 足が冷えるという人は、太い血管がある足首のくるぶし周辺を温めるようにしましょう。
ポイント 体温調節にも役立つ、あったか小物も忘れずに 首まわりは冷たさを感じる「冷点」が多く存在し、「冷え」を感じやすい部分。マフラーやストールなどで襟の隙間をおおい、首まわりを暖かくするようにしましょう。
また、手足が冷えると末端にある体温をコントロールする血管が閉じて血液が流れにくくなり、全身が温まりにくくなります。手袋や厚手の靴下で、手足を冷やさないように心がけましょう。

外出が楽しみになるひとり散歩のススメ

日光浴と気分転換を兼ねて、気が向いたらいつでも実行できる”ひとり散歩“をしてみませんか。歩く速さやコースはその日の気分次第。自分のペースで自由気ままに楽しみましょう。

しっかりウォーキングをしたい人は

しっかり歩くと冬でも汗をかくので、吸汗速乾性のある肌着を選びましょう。ウールのコートなどよりも、軽くて風を通さない防風性のあるアウター(薄手のダウンジャケットやウインドブレーカーなど)のほうが、歩きやすいでしょう。
また、外に出る前に、温かい室内で足首・手首まわし、膝回し、腰まわし、膝の屈伸などを行い、体を温め、筋肉や関節をほぐしてから出かけましょう。外の空気は乾燥していることもあり、気づかないうちに体の水分が失われています。水分補給も忘れずに行いましょう。

行きつけのお店をつくる 散歩コースの途中にあるお気に入りのカフェや、気になるものが並んでいる雑貨屋さん、季節を感じさせてくれる花屋さんなど。散歩の途中に気軽に立ち寄れる店を見つけましょう。店の人とのちょっとした会話も気分転換になり、”今日は〇〇に寄ろう”という、楽しみもできます。
「今日のお気に入り」を見つけて例えば、写真を撮ってみる 面白い形の雲や、道端の草花、電線にとまった鳥など。何か一つテーマを決めてもよし。とにかく”面白い””かわいい”と思うものを探すのもよし。見けたものを、ケータイやスマホ、カメラで撮影したり、感じたことを俳句にしてみたり、散歩日記をつけたりしましょう。
新しい発見を楽しむ とくに目的を決めずに、あまり通ったことのない道を歩いてみるのも楽しいもの。意外な店を見つけたり、素敵な景色に出会ったり。ちょっとした探索気分で、新しい発見を楽しみにして行きましょう。
ときには誰かを誘ってみる ときには家族や友人を誘ってみましょう。人と会話することで心が晴れやかになるなど、ひとりで歩くときとは違った楽しみや発見があるはずです。
おしゃれな防寒アイテムをそろえる マフラーや手袋、帽子などの防寒アイテムで、冬のおしゃれを楽しみましょう。お気に入りの防寒アイテムをいくつか用意してその日の気分で選べば、外出が一層楽しくなります。
ポイント どのくらいの時間歩くの? 天気のいい日の午前中、20分くらい歩いて5分休憩して戻ってくるくらい(1回45分程度)の散歩がおすすめです。体力に合わせて休憩を多めに入れたり、歩く時間を加減したりしましょう。
外出が困難な場合は、無理せず自宅のベランダで日光浴するだけでも◎。